【書評】寂しさに効く本。三浦しをんさんの『きみはポラリス』は恋愛小説が苦手な人にも読んでほしい
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どうも。ひつじ田メイ子です。
好きな本のことをふわぁっと書こうかなと。
『きみはポラリス』のあらすじ
どうして恋に落ちたとき、人はそれを恋だと分かるのだろう。三角関係、同性愛、片想い、禁断の愛……言葉でいくら定義しても、この地球上にどれひとつとして同じ関係性はない。けれど、人は生まれながらにして、恋を恋だと知っている──。誰かをとても大切に思うとき放たれる、ただひとつの特別な光。カタチに囚われずその光を見出し、感情の宇宙を限りなく広げる、最強の恋愛小説集。http://amzn.to/2mE2Op9
この本は短編集になっていて11編のお話で構成されています。
各お話が20p~30pづつで構成されているのでとても読みやすいです。
この本は、恋愛小説が苦手な人にこそ読んで欲しい
私は、甘々の恋愛映画や恋愛小説が少し苦手です。
最近コミカルなものは少し見れるようになりましたが、王道物はやはり苦手です。
小学生のころは『ちゃお』や『りぼん』などの少女漫画を読んでいたはずなのですが。
中学校時代くらいから、「恋愛や人生って、お話の中みたいにうまくいかないよな」って思い始めたのだと思います。
シンデレラも昔は大好きなお話で何度も読み返しました。
それなのに、いまでは素敵な王子様と結ばれた後の「ハッピーエンド」はハッピーエンドのままなのか気になる大人になりました。
少しひねくれているのだと思いますが、
「人間は1人で生まれて、1人で死んでいく」
と心の中で常に思っています。
始まりと結末が分かっているからこそ、生きている間に共に歩める人を探しているのだと思います。
でも、自分以外の人間は自分とは違う人間です。
考えも、行動も、自分とは異なっているのが普通だと思います。
相手が思い通りになんかなるわけ無いし。
相手を思い通りにするべきでは無いと分かっていても。
そこに生まれる寂しさや、言いようの無いもどかしさ。
人間のちょっとした狡さやそれらを許す心を描いているのが、三浦しをんさんの『きみはポラリス』です。
この本に聖人君子は出てきません。
全ての登場人物が大切な誰かを愛し、その愛が真っ直ぐ相手に伝えられないもどかしさを感じています。
人間関係の微妙な空気感や、人物の息遣いが聞こえてきそうな文体が私は好きです。
特に好きなお話を3つ挙げました
ここからネタバレなので、未読の方はまとめまで読み飛ばしてください。
1.永遠に完成しない二通の手紙/永遠につづく手紙の最初の一文
このお話は、11編お話を挟み込む形で一番最初と最後に配置されているお話です。
岡田と寺島という登場人物が共通して登場します。
簡単に言うと、クールな岡田は馬鹿で恋多き寺島のことがずっと気になっているのですが、寺島はそんな気持ちはつゆ知らず、岡田の目の前で好きな女の子に宛ててラブレターを書き出します。
その様子を見ながら、岡田は色々と思案をするというだけのお話です。
好きなセリフ
俺はいつもこうだ。友だちのふりをして、友だちじゃない。お前の幸せを願ったことなんか一度もない。
好きな人に恋愛相談されるのって、やり場の無い気持ちになりますよね。
相手が悪いわけでも、自分が悪いわけでもないけど、心の底から応援はできないっていうしんどさ。
こういうモダモダした話が好きなんです。
2.私たちがしたこと
サスペンスっぽいお話です。このお話が一番好きです。
主人公の朋代と元カレの黒川は、高校時代に大きな秘密を作ってしまい、誰にも打ち明けられないまま大人になってしまう。
お互いは高校卒業後、会うことは無かったが、友人の結婚式で出会うことになる。
「大きな秘密」で繋がりお互いを思い合いながらも、二人は別々の道を歩むことを選択する。
好きなセリフ
「でも、もう絶対だれにも、俺がしたことを話しちゃいけない。おまえは全部忘れたふりで、ふりがふりじゃなくなるまで忘れて、楽しく暮らす。分かった?」
(中略)
これを告げに彼は来た。私を自由にするために。
秘密の内容を書いてしまうと面白くなくなってしまうので、隠しました。
好きだった相手と、もうきっと死ぬまで会うことは無いだろうけど、どこかで繋がっているような気がするという点では共感できる作品だと思います。
3.春太の毎日
ほのぼのとしつつ、ちょっと切ないお話。
これはどんな人にも受け入れられてもらいやすいと思う。
主人公の春太と麻子は同居生活を送っている。
春太の悩みは麻子の同僚の米倉が頻繁に家に遊びに来るようになったことで、日々苛立ちが増していく・・・というお話。
読み進めると意外な驚きがある作品。
好きなセリフ
麻子の心臓は、俺のものよりゆるやかに鼓動を刻む。命の速度が違うからだ。俺はせつない。そして悲しい。麻子の悲しみを感じるのに、できることはあまりに少ない。
優しくて、悲しくて、毎日を精一杯生きようと思えるお話です。
まとめ
何となく寂しい時、だれかとすれ違ってしまった時、言いようの無い不安がある時にこの本は優しく心に寄り添ってくれると思います。
ぜひ、一度お手にとってみてください。