理想の私が死んでいく

適応障害で休職→復帰しました。悩みつつ楽しく生きる雑記ブログ。

ピースの又吉さんが書いた小説「火花」を今さら読んだ感想。不覚にも、ボロ泣きした

「火花」を読み終わってすぐ、何か書かなきゃいけないと思った。

 

書評という体をとるべきなのかもしれないのだけれど、いまの思うことを書いておこうと思った。

 

私は「火花」という作品は名前こそ知っていたけれど、何となく敬遠していた。

 

ピースの漫才は好きで、又吉さんも好きだったのだけど、敬遠してた。

 

ピースの又吉さんがメディアで「芥川賞受賞!!」と煽られれば煽られるほど、何となく興ざめして、「いつか読もう」と思っていた。

 

又吉さんがメディアで「先生!せんせい!」と冗談めかして持て囃されているのが、嫌だった。

 

本当にネタにしてて面白かったらいいんだけど、又吉さんも綾部さんも嬉しさ半分、どこか居心地が悪そうに私には見えて、なんとなく苦しかった。

 

なんか、そういう色々な要因があって「火花」は気になるけど、無意識で避けてた作品だった。

 

「火花」を読んだきっかけは、ピース又吉さんのエッセイ「夜を乗り越える」を先に読んで、「この人の頭の中をもっと見てみたい」と思ったからだった。

奇跡が起こらない物語

「火花」を未読だったら申し訳ないんだけど、この作品には奇跡が起こらない。

 

びっくりするほど現実。

それなのに全然飽きずに、グイグイ物語の世界に引っ張られてしまう。

 

現実の眩しさとか、怖さとか、しんどさとか。

そういうのが、連なって混ざってる。

 

読む前のイメージとしては

「漫才師が出会って夢を語って、ネタで揉めてなんやかんやして成功する話」

だと思ってたけど、物語の主軸はそこじゃなかった。

 

夢を持つことは大切だよね、みたいな読後感になるわけではない。

自分らしく生きることが必要とか、そういう教えがあるわけでもなくて。

 

誰かの日記を読んでいる感覚に近かった。

 

神谷という存在

物語のキーパーソンである主人公の先輩、神谷という登場人物が、圧倒的な魅力を放っている。

 

物語は99%の真実に1%の嘘を入れることで、リアリティが生まれるとどこかで聞いたけど、「火花」の中の1%は神谷だと思う。

 

神谷は常軌を逸した方法で、自分の笑いを追求していく。

 

それは「他人に笑ってほしい」という表層的な欲求から安易に派生したものではなく、自分の求める「本質的な笑い」を追求している。

 

ただ「他人に笑ってほしい」という欲求であれば、受け手のニーズを考えて発信することが必要であり、受け手の反応が気にすると思う。

 

ブログで言い換えれば、トレンドネタや話題のニュースのネタで記事を書いて、PV数を集めたり、周囲の反応をアレコレ伺う行為に近いように思う。

 

それは全く悪いことではなく。

受け手の目線を考えて作ることは大事であるし、一般的な手法であると思う。

 

でも、神谷が求めているものは、周囲や世間の評価なんか関係なく「自分の笑い」を作り続けていくことであり、それに対し迷いなく突き進んでいく。

 

対して、主人公の徳永は世間の反応を気にし、自分の笑いとは何なのか悩み、神谷を師匠と仰ぎ、笑いの本質を見つけ出そうともがく。

 

神谷という全く迷いを感じさせない一本筋の通った人物が物語に存在するからこそ、主人公徳永の抱く現実的な葛藤によりリアリティが生まれているんだと思った。

 

心に刺さる名言ばっかりだった

「いいな」と思う言葉がたくさんある本だった。

共感だけを追い求めない
一つだけの基準を持って何かを測ろうとすると眼がくらんでまうねん。たとえば、共感至上主義の奴達って気持ち悪いやん?共感って確かに心地いいねんけど、共感の部分が最も目立つもので、飛び抜けて面白いものって皆無やもんな。阿呆でもわかるから、依存しやすい強い感覚ではあるんやけど、創作に携わる人間はどこかで卒業せなあかんやろ。

この言葉はたしかに、と考えさせられた。

何かの作り手である時、時に無意識的に共感してもらうことを目的化してしまいがちだけど、「自分が本当に発信したいもの」をキチンと把握しておかないといけないと思った。

世間から自分を剥がすことはできない

本当の地獄というのは、孤独の中ではなく、世聞の中にこそある。

これは自分の中にもずっとある感覚で、世間を認識する時、孤独になると思う。

世間の目をいくら気にしないようにしていても、私は既に世間というものがあると知ってしまっている。

それを知らないふりは出来ず、自分は世間の価値観と戦うしかないんだと思う。

 

夢は眩しくて、切なくて、それでも続いてく

最後の30ページくらい私はずっと泣いていた。

 

まさか、お笑い芸人さんが書いた小説で泣かされるとは思わなかった。 

 

他の人の書評を読んで無いので、 ひょっとしたら泣いているのは私だけなのかもしれないと思うと、少し恥ずかしい。

 

でも、夢を追い求めることについて本当に丁寧に考えて書かれた作品だと私は思ったし、心に刺さるものがあった。

 

ピースの又吉さん自身「太宰が好き」と公言されているように、文体が全体的に少し硬めで、個人的には読みやすい文章だった。

 

今回は書評というより、ただの今日感じた思いを残しておこうと思って、一気に書き上げた。

 

「火花」の中で神谷も、

お前の言葉で、今日見たことが生きているうちに書けよ

という台詞を言っている。

 

心が動いた体験は熱を持っているうちに書かなければ、死んでしまうと思うので、なるべくすぐに保存しておけるようにしておきたいと思った。

 

今日はこれで。

おしまい。